Fire Emblem


満月の夜に最初に“お父さん”が出て行って、次にアイクが外に出て行った
見張りだった私は“お父さん”と他愛もない会話をして早く帰ってきてねと言って見送った
“お父さん”は私の頭を撫でて出て行った
今思えば、“お父さん”はうんともすんとも言ってくれなかったことに気がついた、けどもう遅い
アイクと“お父さん”が帰ってきて
“お父さん”はただの喋らない死体になった

私は泣いた

けどもっと泣きたくなったのは私がアイクとミストと一緒に泣こうとしたら
みんなから兄弟二人だけにさせてやれと言われてしまった事
シノンだけなら理解できた、けどティアマトまで言われてしまって
今まで薄々感じてたけど認めたくなかったものを認めなきゃいけない気がして
泣きたくなった

ずっと一緒に居た、小さい事からずっと
だって私には“お父さん”しかいない、他にはいないのだ
それに“お父さん”が言っていたもの「アイク達といい家族になってくれ」、って

「アイク・・・」
か・・・」
「・・・ミストは?」
「今休んでる」
「そう・・・あ、あのね“お父さん”のお墓にお花持ってきたの・・・」

上ずる声を聞かれなかっただろうか?
けれどアイクはそんな私の様子に気づく余裕も無く
ただ疲れた目で私の腕の中にある花束を見た

「そうかありがとう・・・」
「なんでそんな事言うの?当たり前だよ“お父さん”でしょ・・・」
「・・・そうだな」
「アイク・・・私、ずっとアイクとミストの傍にいるよ」
「ああ・・・」
「だって私達、家族だもの兄弟だもの、ずっと、ずっと」

―――“お父さん”がいなくても

一瞬アイクが複雑そうな顔をしたのを私は見逃さなかった
なんだかそれがとってもイヤで
誤魔化す為に“お父さん”のお墓にお花を添えてアイクと手を繋ぐ
傷のついた大きな手、その手を強く強く

・・・」

戸惑いながらもアイクは手を握り返してくれて
私はそれが嬉しくて私は別の意味で涙が出た
アイクは私が“お父さん”以外の理由で涙を流しているなんて知るはずも無く
ただ黙ってお墓を見ていた



――――家族になってくれ――――



“けれど“お父さん”に「兄弟になってくれ」と言われなかったのは
小さい私に解るわけなかった

何が言いたいかと言うと、私はアイクと何違わぬ家族の絆を勝手に信じていて、
そしてそれがおこがましかった振る舞いだったのだと“私”は理解してしまった事

私は家族になることがみんなの幸せだと信じていて、信じてた
でも、それは嘘で

違う、誰も嘘はついていない!!

ただそれはそういう世の中の仕組みだったという事に気がつき
察しなければならなかったのだ!!

「・・・アイク・・は・・・・・・」
「・・・?」
「アイク・・は私を・・・見捨てない・・・で・・・」
「何を言ってるんだ?なんで俺がクリスを見捨てるんだ?」
「・・・だって・・・もう私は兄弟じゃないから・・・」
「・・・!」
「・・・“お父さ、ん”・・・団ちょ、うが、もう・・・いないか・・ら・・」
「っ!」

グレイル団長のお墓も、アイクの顔も見る事さえなんだがおこがましく思えてきて
自分の顔から水滴が地面に落ちていく事しか見れなくて
きっともうここに居られる理由がない
そういうとアイクは私を抱きしめてくれた、触れたところが熱を持っていて
いつかこの温もりが無くなるのだと考えると寂しかった

「馬鹿なこと言うな!!は家族だ!!」
「・・・(兄弟じゃない)・・・・」
「親父が居なくたっては俺達の家族だ!!だから、だからどこへも行くな!」
「・・・う・・ん・・・・」

(いつまで私はアイクの傍に居られるのかな)

ここは傭兵団
アイク達の家族は私だけではなかったのだと言う事
嫌だ

イヤだ

やだ・・・



離れたくないよ・・・



老いを拒絶するかのように





でもそれを止めることは誰にも出来ない