Palais de Reine





「・・・・殿下」
「ヴィンフリート」

自分の姿を捉えると、花のような笑顔を向ける姫
その笑顔に胸が痛くなる

「・・・よくきてくれました」
「いえ、私が出来たことなど・・・」


この日、フィーリア姫は嫁ぐ

運命には抗えずに、彼女はあの宰相の嫁ぐことになった


「ありがとうヴィンフリート、いつも私を支えてくれて・・・」
「殿下そのようなお言葉は不要です私は、私は何も、何も出来ませんでした・・」


そうだ何もできなかった

愛しい人を守ることも、自分の夢を叶えることも


「いいえ、貴方がいなかったら私は王の試練をやり遂げることさえ難しかったでしょう」
「・・・・・殿下」


齢十五の何も知らぬ姫に何の罪があろうか

王を失い、突然消えた兄の代りを努めようとした彼女に何の非があろうか


「お願いがありますヴィンフリート・・・」
「はい、何でしょうか殿下・・・」



鐘が鳴り響く

もう今では遠い昔に感じられる

あの鐘の下に姫の傍に寄り添うのは自分だと

そう信じて生きてきた


「幸せになって下さい」
「殿下・・・」


だけど、もうあの自分が愛した人には


「もう良いのです、私の為に身を犠牲にしなくてよいのです」

「殿下それは・・・!」


違う、そんな事、一度も思ったことなど
だがそれを言って今更どうする

彼女はもう自分の手の届かない所に行ってしまったのに


「・・・・ありがとう私の大切なヴィンフリート」



そう言って彼女は頬に口づけをくれた

幼い頃にしたような、触れるだけの



「さようなら・・・」


ああ、もう本当に

触れる事すら叶わな、い








幻想の鐘は鳴り響く