FINAL FANTASY TACTICS

 

『大貴族の令嬢
大貴族家の娘で幼い頃アルマと同じ修道院に入る、そのためアルマ達とは仲が良い
クリスが10歳を迎えた頃に騎士になるためと退院し、魔道や剣術を学ぶ事になる
ベオルブ家では剣術を教授してもらいディリータ達とも良き仲
大貴族の令嬢だが社交界には現れることはなく、顔を知っている者は少ない






――――マンダリア平原――――






「っく・・・・・」

「・・・っほらほら!どうした!」


「・・っ・・やぁ!」



「・・・・っ甘い!・・動きが鈍いぞ!」



隙の出来たを狙うディリータ、勝負はついた
そうディリータは気を抜いたが、それは油断につながり、その隙を見逃さなかった
かろうじてを攻撃を避け、捨て身と言うべき攻撃を繰り出した

「・・・・・やぁっ!!」
「・・っく!!」

予想外の攻撃に反応が遅れ体位を崩したディリータだが
体勢を持ち直そうと足に力を込め様としたそのとき

「危ないディリータ!!」

「・・うわ!!」


の忠告もむなしく

足元の石につまずき、後ろに倒れこんだ


「ディリータ!!」

「・・・・つぅぅ!!」


自分の兜を脱いで急いで駆け寄る
ディリータは頭を打ったように見えた

装備をしているとはいえ、怪我をしないとはいえない


「ディリータ・・・大丈夫?」

「痛ててて・・・・」
「魔法かける?少しは治ると思うけど・・・」

心配そうに顔を覗き込み、怪我を確かめようとの指がディリータの額に触れようと
するがディリータはその指先から逃れるように顔を逸らした

「平気だ・・・・」

「ディリータ・・・・?」
「平気だ、僕は平気だから」
「ディリータ!動いちゃ・・・あ!」

横で持参した魔道書を取り出そうとしたから
それを取り上げるディリータ

「もう、ディリータ・・・」
「だから平気って言ってるじゃないか」
「・・・・ほんとに?」
「ああ・・・」

どこか素っ気ないディリータの様子に違和感を感じる

「ディリータどうかしたの?何か変だよ・・・?」
「なんでもない」



・・・・やっぱりなにか変・・・目、みてくれない

これ以上、ディリータを問い詰めても


同じ答えしか返ってこない、そう思った



「じゃあ、私の勝ち、だね」




どこか得意気にはディリータに言い放った
たぶん石で転んで負けた事が不満だと、は理解した

「・・・・・・は?」

「ディリータに何も無いなら私の勝ちだよね?」
「あ、あれは石が!!」
「怪我してないんでしょ?」
「・・・っぐ」

の言葉に、言い返せないディリータ
勝ちを認めるには、自分の油断を認めなければいけない
かと言って、素直に負けを認めるのは

「(・・・・・・イヤだ)」

剣の腕は自分のほうが上だ、それもある
しかし、油断して、おまけに転倒するなどと

「・・・・ディリータ?」


相変わらず自分を見下ろすには、そんな事微塵も気にしていないように見える

だけど、に自分の醜態を見せてしまったのが



何より恥ずかしい




「(もう、頑固なんだから・・・)」


難しい顔をして唸る姿を見ては堪えきれずクスクス笑い始めた
そんなクリスをみて、やっとディリータはからかわれた事を自覚した


「・・・・・



「うふふ・・なぁにディリータ?」

「・・・図ったな?」
「そんな、大事なディリータ様に図るなんて私には出来ません」


苦い表情でを睨むが、は楽しそうに笑うだけで

しかし、からかわれたディリータは面白くないようで





ぐいっ―――





「・・・・きゃ・・・・!」





ディリータが正面からの手を引き寄せ体制を崩す
どうやら先ほど笑った仕返しのようだ


「・・・い・・・た・・・もう、ディリータ・・・・」


しっかりと抱き込まれ怪我はしなかったようで
けれど、当の本人はそれを見越していたのか気にするわけでもなく



「勝ったのはどっ・ち・だ?」


少し怒ったように顔を寄せ、問い詰める
その様子にディリータが拗ねてると感じたはしょうがないなぁという笑顔で

「・・・ディリータだ、よ」

落ち着かせるように頬を軽く撫でてディリータの
胸に預けたまま「負けず嫌いだなぁ」とつぶやいた

そのあと小さい声で、「が笑うからだ・・・」そう漏らした
本人の頬が少し染まっていたのは、気のせいではないと思う


「相変わらず、負けず嫌いねディリータは」
「・・・・剣術はに負けられないさ」
「ひどい、私の方が遅く始めたけど筋はいいものっ」
「始めた頃、ロクに振り回せなかった奴は誰だっけ?」
「もう、えいっ」
「おっと・・・!脇が空いてるぞ」

がじゃれてディリータの頬を引っ張ろうとするのが
その隙を見逃さなかったディリータは

「や、ちょ・・くすぐっ・・・・!」
「ほら〜ほら〜」
「・・ディ・・リ・・・!!」
「どこまで持つかな〜♪」

さっきのお返しとばかり、の声を抑えようともがく姿が楽しいディリータ
その顔は満面の笑顔だ、だがその笑いもそこまでだった








「・・や・・とめ・・・!・・・ひゃん!」





ピタ


その声にディリータの手が止まった



体力を消耗したらしくディリータの手が離れた瞬間
どさりと胸の中に倒れこむ
その息は荒く、頬は赤く染まり、目は涙で潤んでいる



「・・あ、わ、?」
「ディ、リータ・・の・・・ば、か・・・」


のツボで入ってはいけない所に、入ってしまい
出してはいけない、声が出た

ディリータは、なにやら視線が定まらない



「・・・あ、いや、その・・動け、るか?」

ディリータは目を合わせないようにを退かそうとするが

「・・・やだ・・・」


想像以上に疲れたは、いやというばかりに
ディリータの胸に縋りついたままだ

「・・・・あー・・・・・?」

「ばか」

「・・・・・あ、いや」

「ばか、ディリータのばか」

「・・・・・」

「馬鹿、ばか、ばぁかぁ!」

「・・・・・・すまない・・・・」



の罵声にも、大人しく耐えるディリータ
実際ディリータの中では仕返しなんて

どうでも良くて、ただと遊びに興じるつもりだった



「・も・・・う・・・」

「すまない、機嫌を直してくれ」


結果的には戯れどころか、の機嫌を損ねてしまったが



「・・・・


「知らない・・・・」





ディリータなんて知らないんだから・・・・














大貴族家の第一子と記されているが、他の記録では一切その名は存在しない

処分されたのか、名を残さぬよう仕向けられたのか

はたまた別の意図が在ったのかは不明である・・・・

















遠い日の日常、楽園の箱庭

疑問の中の幸せ、けれどまだ信じることが出来た
  否、信じることしか出来なかった

水面に映る月が、手に届く距離だと思い込むように