FINAL FANTASY TACTICS

 

ラムザにディリータ、私の幼馴染で大切な友達
喧嘩もするけど、最後はどちらかが謝って仲直りする、そんな関係

だからさっき泣いた事もディリータが謝って、それで終わり
私がずっと泣いていたら、二人に迷惑をかけてしまう
だから【魔法】をかけて涙を止めて、私がおしまいにするの
・・・おしまいにするの、だって私が

私が二人の未来を壊してはいけない

私なんかのせいでラムザとディリータの未来を閉じるなんて
あってはいけない




『魔法都市ガリランド』






――――市内――――






「皆、作戦は頭に入ってるね?」

ラムザの問いかけに無言でそれぞれが頷くのを確認すると
略奪している盗賊に見つからないように忍び寄り
他の仲間達は足早に別地点へと向かう

狭い通路で固まって行動するというのは危険と考え
二手に別れ、それぞれが片付けるという作戦だった

「・・・、本当に大丈夫かい?」
「任務に支障はないから平気」

その際、ラムザはちらりとの表情を伺う。さすがに任務遂行が目の前にあり
学院の様子とは裏腹に落ち着きを取り戻しているようだった
しかし、目辺りがほんのり赤いのがラムザの心配をあおる

「僕が言いたいのは・・・」
「・・・、危ない事はなるべくするなよ?」

ラムザと同じく別働隊の様子を見ていたディリータだが
言葉を濁すラムザの代わりに別の話題で話を続ける

「私は前に出ず、全体を見て行動せよ、でしょ?」
「分かってるならいいよ、魔法が使えるは貴重だからな」
「・・・人を物みたいに言わないで、剣だってちゃんと使えるんだから」

拗ねたような、落ち込んだような声で言われて
ディリータはあわてた顔になるが、すぐに自分の失言に気づき
バツが悪そうに目を閉じてすまないと謝る
前回といい最近の琴線に触れる事が多く自分の言動に軽く肩を落とす

「ディリータ・・・」
「ラムザ頼むから睨まないでくれ、これでも反省しているんだ」

士官候補生はあくまで候補生であり基礎という基礎を兼ね備えたものしかいない
のように魔法を使えるものなど、少なくともディリータの周りには皆無で
本人からしてみればごく事実を言ったまでのことだが
大貴族であるの立場からしてみれば、そこは繊細な問題だったのかもしれない

、学院から命令されているし無理は良くないと思うけど・・・」
「簡単に言うと怪我をさせずに手柄を上げさせろ、だったか」
「・・・命令なんて、また家からの指図に過ぎないもの・・・」
「きっとのことを心配してるんだよ・・・」
「学院に口を出して私だけ特別待遇しろなんて 皆が負担をこうむるもの・・・
一体お母様は何を考えていらっしゃるのかしら・・・」


『さすが大貴族の娘だ、待遇が違うな。
毒見係はすべて自分達でお前は美味い所だけもって行くのか』

様どうぞわたくしを御頼りください!貴方様をお守りいたします!
そしてその暁には御当主様に我が家の・・・』


罵られ嫉まれ、血筋だけを見る者にすり寄られ、晒し者以外何者でもない
いつも窮屈な思いをするのは自分で、その度に逃げ出したい気分に駆られる
だけど逃げ出す事など出来ない
逃げても、行く場所なんてありはしない
ラムザ達とも会えなくなるなんて耐えられない

・・・耐えられな、い

また涙が込み上げてきそうになり目を閉じ、痛む胸を押さえる
それを誤魔化そうと胸を押さえた手を爪が食い込むまで握り締め明るく振舞う

「だ、だめだよね・・・お母様の言う事をちゃんと聞かないと」
・・・」
「ほら、二人とも私は本当に平気だから今は作戦に集中!」

心配そうにする幼馴染に唇を尖らせて抗議するが
二人の目は不満の色を浮かべていた
まだ何か言いたそうなラムザに口を開こうとしたが
それは切迫したディリータの言葉により閉じられた

「合図だ、ラムザ」
「了解」

人数の少ない、こちらから先に仕掛ける算段である
隊長であるラムザはとの会話を切り上げに背を向け
盗賊の中心まで壁伝いに近づいて隙を探る
その姿から目を離さずディリータがに話しかける

「・・・ちゃんとの剣術も頼りにしてるよ、ほんとだ」

驚いて顔を見上げるとそこには真剣なまなざしで前を見つめるディリータがいた
クリスはディリータが嘘を言っていないと分かると嬉しそうに

「ディリータ・・・わ、私も自力で頑張って捕まえるから大丈夫!」

威勢の良い宣言にディリータは軽くため息をつく
は任務と訓練を同等に見てるのではないかと逆に心配になり
に苦言を呈しようとしたのだが

「・・・簡単に言ってるけど捕まえるのは・・・!」
「大人しく降伏した時の場合、それ以外なら生死をとわず・・・」

ひどく静かな声だった
小言を指摘され怒っているわけでもなく
標的を見捨てたような冷たい声でもなかった

任務という事も理解しているし、自分の立場も分かっていると返され
ディリータは小さく・・・そうか、と返すのが精一杯だった
そんなディリータにはディリータに感謝の言葉を述べた
驚いて軽く目を見開き、別に僕は何もしてないと慌てて返したが
クリスは首を横に振って答えた

「・・・ううん、そうやって大事な事、ちゃんと教えてくれるのディリータだけだから」

どこか諦めたように呟く
その表情が言葉がディリータの中で何か途方も無い違和感を生み出す
何か言わないといけないと思って口を開こうとするのだが
結局ラムザの「行くぞ!」という号令がかかるまで それが声になることはなく

に届くことなかった
















貴族の世界は
妬むか媚びるかのどちらか一つだけ

ラムザは優しい友達、だから今まで叱られたりなんて
一度も無い